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池浦 広美*; 関口 哲弘
Japanese Journal of Applied Physics, 58(SI), p.SIIC04_1 - SIIC04_4, 2019/08
被引用回数:0 パーセンタイル:0(Physics, Applied)多結晶クロロアルミニウムフタロシアニン試料の非占有伝導帯の電子構造をCl K殻吸収端近傍のX線吸収分光法(XAS)により調べた。XASスペクトルは全電子収量(TEY)および部分オージェ電子収量(AEY)モードにより測定した。部分AEYスペクトルは光子エネルギーの関数として通常オージェ収量およびスペクテーターCl KLLオージェ収量をモニターし測定した。TEYスペクトルはデコンボリューションできないブロードなピーク形状を示した。一方、通常AEYスペクトルおよびスペクテーターAEYスペクトルにおいてCl 1s*(Cl-Al)遷移は2成分にピーク分割された。これら競合する2つの過程として内殻正孔に局在した内殻励起子および内殻正孔を有しない非局在化した伝導帯が関与すると解釈された。Cl K-edge XASにおいて伝導帯に起因するピークが観測されたことから、伝導帯形成にCl配位子の軸方向が関与していると推察された。実験結果はオリゴマー鎖状(-Al-Cl-Al-)に伝導帯電子移動が起こる可能性があることを示唆した。
吉越 章隆
no journal, ,
2011年の福島第一原子力発電所の事故の後、環境回復にとって放射性セシウムの除染が重要となっている。Csは風化黒雲母のような粘土鉱物に不可逆的に取り込まれることが知られている。Csを効率的に除去する方法を開発するうえでCs吸着の物理化学の理解が重要となっている。放射光光電子顕微鏡(SR-PEEM)を使って人工的にCs吸着したミクロサイズの風化黒雲母粒子のピンポイント分析を実施した。元素分布をナノメートルの空間分解能で観測した。位置毎のCs M端およびFe L端のX線吸収スペクトル測定から化学状態分布を調べた。本研究は、環境物質に対するナノスケール化学分析のツールとしてのSR-PEEMの有用性を実証するものである。
関口 哲弘; 横山 啓一; 矢野 雅大; 魚住 雄輝*; 朝岡 秀人; 鈴木 伸一; 矢板 毅
no journal, ,
セシウム(Cs)-135(Cs)(半減期230万年の長寿命核)とCs(安定同位体)等の同位体分離スキームを開拓することは核変換消滅において重要課題である。気相の同位体選択的光解離反応の結果、Cs原子とCsIが生じる。我々はこれらの再衝突による同位体逆交換反応を抑制することを目的とし炭素系選択吸蔵材料の探索を目指している。本研究では吸蔵材料としてCフラーレン固体を使い、放射光を用いた光電子分光法(XPS)によりCs原子またはCsI分子がC固体へ侵入する様子をミクロスコピックに調べた。分析方法としてXPSの放射光X線の光子エネルギー依存性、光電子出射角度依存性、Arイオンスパッター時間依存性の測定を行い、Cs濃度の深さ分布を解析する。本発表では光子エネルギー依存データの解析方法に関して詳細に紹介する。室温においてCs原子とCsI分子の間に顕著な吸蔵選択性が見られた。またC基板温度ならびにC固体作製方法の違いなどCs蒸着における実験条件の違いによりCs深さ濃度分布が異なる可能性があることが見出された。
寺澤 知潮; 平良 隆信*; 小幡 誠司*; 保田 諭; 斉木 幸一朗*; 朝岡 秀人
no journal, ,
銅における炭素固溶度が低いため、銅基板上では化学気相成長(CVD)法によって単層のグラフェンが選択的に成長される。よって、グラフェンのCVD成長は次世代のエレクトロニクスのためにもっとも有望な技術であると考えられている。本研究では、我々は低い炭素固溶度を持つ金上でのグラフェンのCVD成長を報告する。我々は熱放射光学顕微鏡を用いて金上でのグラフェン成長のその場観察を達成した。900CにおいてAr, H, CHの流量を240, 8, 5sccmとして熱放射像を取得したところ、グラフェンに対応するとラマン分光法で決定された明るい島が金箔の2つの溝の間に成長することが確認された。熱放射光学顕微鏡によるその場観察に基づいて、我々は金上でのグラフェン成長の機構について議論する。